質問の意図を知った面々が、様々な反応を示す中、熟考していた部長さんがようやく口を開いた。
「ウェルダン、だな」
「は?」
「お、おい…兄貴?」
「…如月、お前…熱でもあるのか」
「いや、今朝も測ったが平熱だ」
「…毎日計っとるん?」
「あぁ」
毎日熱を測るマメさも気になるが、考え抜いた答えが千秋…もとい、ウェルダンということを知り、とりあえず今は千秋を選んだ理由が気になる。
「ちなみに、理由を聞いてもいいか、律」
「簡単だ。俺はあまり肌が強くない。東金のように焼こうとすると、恐らく赤くなるだろう」
「あー…わかるわ。俺もそうや」
「俺の肌はどちらかといえば、土岐やの中間といったところだろう。だから、自分ではなりえない、東金を選んだ。それだけだ」
理路整然…とでもいうのだろうか、酷くまじめに答えられ、このネタを面白がって始めた自分がどうしていいかわからなくなってしまった。
唖然と立ち尽くしていると、今まで静かに付き合ってくれていた千秋が、あたしの肩を抱き寄せた。
「よし、これで勝負は決まったな」
「せやね。俺が1P、が2P…千秋が3Pで優勝や」
「だったら、優勝の褒美を貰おうか。この暑い最中、休みを削って付き合ってやったんだからな」
優勝の褒美なんて、あるわけがない。
だって、これは思いついた遊びなんだから…と告げようと、千秋の方へ顔を向けた、その時だった。
「っ!!!!!!」
「…あー、やってもうた」
瞳に映ったのは、小麦色の肌と…綺麗な金の髪。
そして、重なった唇に触れている、熱いキス。
僅か一瞬のことだったけれど、思考を麻痺させるのには充分で、崩れる身体を支えてくれたのは背後にいた蓬生だった。
「じゃあ、俺は休むぞ」
「ずるいわ。収拾つけるん、大変やん」
「と一緒になって遊んだ罰だ」
「…そのワリには、随分満足そうな顔やね」
「当たり前だ。賞品が良かったからな」
ニヤリと笑って、千秋は満足気に自分の唇を指でなぞる。
その仕草を見て、更に頬が赤く、そして熱くなるのに気づいた。
「はぁ…ほな、またあとで」
「あぁ、あとは任せた。おい、芹沢。俺に紅茶と、ここにいる奴らにも茶を出してやれ」
「はい、わかりました」
「…ほんま、俺様やねぇ」
「で、土岐。どうやって収拾つけるつもりだい」
「せやねぇ…どないしよ。なんや面倒になってきたわ」
「それは困るな。これから部活のスケジュールを組む予定なんだ。これじゃあ使い物にならない」
「部員が2人使えんでも、榊くんほど優秀な副部長がおればどうにでもなるやろ」
「だが、決断を下すのは部長である律なんだ」
二人の視線が、一点に向いたまま動かなくなったのを見て、あたしも釣られるように視線を向ける。
するとそこには、ずり落ちたメガネもそのままに硬直している部長さんがいた。
ちなみに、あたしと千秋のキスシーンは…その場にいた星奏学院の人たちだけでなく、落ち着きかけて戻って来た至誠館のみんなにも見られていたと、あとで蓬生に教えられた。
夏の遊びは、危険と背中合わせ…デス
夏のお遊び…というか、書いてるのは梅雨なので、梅雨のお遊びですね…私の(笑)
当初は、肌の色の違いと肉の焼き方を絡めて遊んでただけなんですが(しかも脳内で)
話としてまとめる気がなかったのに、意外に菩提樹寮全員出てきてまとまって面白かったので、話にまとめてみました。
とりあえず、笑って貰えれば嬉しいです。
というか、笑って下さい(苦笑)
副部長会話は、あんな感じで大丈夫なのか!?とか
律が案外、あーいうパターンだと書きやすいとか
響也の立ち位置はまだ模索中だけど、やっぱ書きやすくて好きだ…とか
一番の大問題は、神戸弁の蓬生と、関西弁の千秋の違いが自分はだせないってとこですね。